【アフターコロナ】の世界(2) 物価上昇?バブル崩壊の兆候?

 アベノミクスでは、当初2年以内に前年比2%の緩やかな物価上昇を目指すことを目標にしていました。いわゆるインフレ目標の設定です。具体的には、マネタリーベースと呼ばれる現金通貨と日銀当座預金(民間銀行が日銀に預けているお金)を合わせたお金の元手と言われるものを異次元の金融緩和として増やしました。銀行などが持っている国債を日銀が買い入れてマネタリーベースを増やすことで、お金の希少性が減り=金利が下がり、借り入れが増えてマネーストック(預金通貨も合わせた世の中全体に出回っているお金の総量)が増加し、景気が良くなるという算段でした。結果としては、お金を借りる人が増えずにマネーストックの増加はそこまで起こりませんでした。お金を借りたいというそもそもの需要がなかったのです。ただこのマネーストック(M2)の増え方がここにきて異常になりつつあるのです。具体的には、マネーストックが2019年度は前年比+2.4%、2020年度は前年比+6.5%、2021年1~3月は前年比+9.5%で、2021年4月のマネーストック(M2)残高は1,162兆円です。このマネーストックの残高を経済規模の指標である名目GDPで割った比率であるマーシャルのKという値も急激な上がり方を示しています。経済規模に応じてマネーストックが増えていくのは良いのですが、経済規模に比して明らかに尋常ではないレベルでお金が積み上がっているのです。マーシャルのKでいえば、バブル崩壊の1990年頃で1倍、2000年頃で1.2倍なのに対して、今は2.2倍近くと、いかに経済規模に対して異常な積み上がり状況であるかが分かると思います。つまり金余りでお金がジャブジャブになっていることで、株式や債券、不動産や金、仮想通貨といったものにお金が流れ込みマーケットを活況にしているのです。


 さてここで前回ご説明したCPIショックに戻るわけですが、このお金がジャブジャブの状況で何が起きたかです。2021年4月の米国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+4.2%上昇し、事前予想を大きく上回りました。長い期間で見ると期待(予想)インフレ率は2%前後に収れんするのが米国での過去のトレンドとなっているので4%超えは結構なサプライズです。4%を超えたのは12年7か月ぶりのことで米国ではCPIショックと呼ばれ、今後のインフレ懸念の高まりから経済の先行きに警戒感を強める人たちが多くなっています。ちなみに3月は+2.6%で2年7か月ぶりの上昇だったためそれなりに驚きがありましたが、4月の上昇幅が過去トレンドと比較していかにサプライズか分かります。5月のCPIも注目ですが、マーケットではこの3月と4月の物価上昇でFRB(米国連邦準備理事会)がどのように動くのか、テーパリング(量的緩和縮小)の時期が早まるのではないかということで、マーケットが一時動揺しボラティリティが高まりました。

 ただ私はこのインフレ加熱論の見方に対しては冷静に見るべきと考えています。2021年4月のCPIが上昇した理由は、コロナショック直後の2020年4月の物価が下がったところと比較しているため数値が高く見えることと、現状では労働力の供給制約が発生していることが要因だと思っています。後者の労働力の供給制約をもっと分かりやすく言うと、手厚い失業手当てをもらっている失業者がまだ職場に戻っていない中で、供給するモノが足りていない=需要が強い状況(爆発的な消費)で起きた一時的な物価上昇ではないかと見ています。米国では失業給付にたくさんのお金を使っていて7月にこのサポートがなくなれば今の失業者も職場に戻らざるを得なくなるため、需要が供給を上回る状況はすぐに収まると見ています。そのため、CPIの上昇が続くことでFRBがすぐに金融緩和の引き締めに動く可能性は低いと考えています。FOMCのドットチャート(政策金利水準の分布図)の通り、2022年4-6月頃にテーパリング議論が開始され、2024年に入ってからの利上げという見方が優勢なのか、それがもっと早まるのか今後も要注目です。


 今の物価上昇を冷静に見るべきと述べましたが、インフレが絶対に発生しないかというとそうとも言い切れないため注意は必要です。マネーストックがどんどん積み上がっているという事実に加え、カネ余りの状況が株価や不動産価格を上昇させているのは間違いないからです。

2021年4月に発売された首都圏新築分譲マンションの1戸当たり平均価格が7,764万円(不動産経済研究所調べ)で、前年同月比+24.9%というのは明らかに高いですよね。1973年の調査以来2番目に高い数字で少し異常さを感じます。株価や不動産の価格が高騰して高い山を駆け上がっているからこそ、高い山から崖下にころげ落ちるときのスピードやダメージに対して恐怖を感じずにはいられません。

 景気悪化局面では金利を引き下げて景気を刺激するわけですが、金利はこれ以上下げることができないくらいまで下がっています(技術的には引き下げ可能ですが限界はあるという意味)。金利は経済の体温とも言われ、平熱をどのように保っていくのか、誰も経験したことのない未曾有の状況下にある中で、ワクチン接種後のアフターコロナの世界はどうなっていくのか、私自身の関心事でもあり、今後もよくウォッチしてきたいと思います。


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