【豆知識】 シャンパン通になるための第一歩(1) #49

 

 今回は豆知識シリーズとして「シャンパン」を取り上げたいと思います。

手間ひまかけた製法により生み出されるきめ細やかな泡と優美な味わい、私はとても大好きです。皆さんもフレンチに行ったときや何かのお祝いのときには飲みますよね、シャンパン。正式には「シャンパーニュ」という言い方が正確ですが、語呂の良さや親しみやすさを込めて、このブログではシャンパンで行きたいと思います。我が家にもいつ開けようか悩んでいるドンペリ(1999)やヴーヴのラグランダム(1995)がワインクーラーに眠っていますが、これといったお祝いごともなく、開けるタイミングを完全に逸しています笑。


 超基本的なことですが、シュワシュワ発泡しているワインは全てシャンパンだと思っている方、今日から考えを改めましょう。パリの北東約150㎞、フランス最北のブドウ産地シャンパーニュ地方で、収穫方法や醸造方法など細かく定められ規定に準じて造られたもののみをシャンパンと言います。その複雑さや厚み、深みのある味わいは、他のスパークリングワインとは一線を画しています。


 まずシャンパンの歴史を簡単におさらいしておくと、シャンパンの先駆者かつドンペリの由来にもなっている、ドン・ピエール・ペリニヨンという修道僧が、17世紀中頃、シャンパーニュ地方の修道院の酒蔵係になったことに話は遡ります。彼がある日酒蔵を見回っていると、ポーン、ポーンという音が聞こえてきたそうです。その理由は、寒さで発酵が止まっていたワインが、春になって温度が上がり、ボトルの中で再発酵し、たまった炭酸ガスがコルクを吹き飛ばした音だったようです。彼はこれをヒントにして様々な工夫を重ねて、今のシャンパン製法の基礎となる数々の革新的技術を生み出したのです。


 ボトルの中で再発酵させることを瓶内二次発酵といい、シャンパン特有の製法の一つでもあります。通常ブドウは収穫後に果汁を絞り、酵母を加えて発酵させます。これは一次発酵と呼ばれるものです。一次発酵で出来上がったワインに、発酵を助ける酵母とショ糖(ワインで造った甘いリキュール=糖分)を入れて瓶詰めを行いますが、この酵母により瓶内二次発酵が始まり瓶内に炭酸ガスが発生します。瓶が密閉されていることで、発酵により生じた炭酸ガスは瓶内に閉じ込められワインに溶け込みます。

 シャンパンは瓶詰めから出荷まで最低15か月間の熟成を経ることになりますが、その熟成の間少しずつ瓶を回転させる必要があります。このクルクルと動瓶する作業をルミュアージュといい、この作業は製法工程の中で最もデリケートな作業と言われ、8分の1や4分の1という決められた回転幅を何日間かけて1回転させるなど細かく規定されていて、職人が1日に1-2万本、熟練した職人だと1時間に1万本のスピードで瓶を回す人もいるそうです。ルミュアージュしながら、さまざまな成分、旨味をワイン内に溶け込ませるとともに、酵母の分解過程で出る澱(おり)を撹拌させて固まらないようにします。

 そして徐々に瓶を逆さまに立てていき、発酵で生まれた澱を瓶口に集めます。そこで一気に抜栓すると澱とともに液体が噴射し、瓶内に澱が残らずに綺麗な状態になります。

この澱引きの作業のことをデゴルジュマンといいますが、長い瓶内澱熟成の間、外部からの刺激を一切受けてこなかったワインにとって、デゴルジュマンは大変重要な瞬間となります。デゴルジュマンをするために、ボトルの瓶口をマイナス27℃の溶液に浸し、澱を凍った塊の状態にし、一瞬だけ栓を開け内部の気圧によりこの氷塊を弾き出します。

 ここで気になるのがデゴルジュマンで減ってしまった分のワインですが、ここにリザーブしてあるリキュール入りワイン(糖分)をプラスしてつぎ込み、栓を差し込んで完成させ、無事に出荷を迎えます。このつぎ足す作業をドサージュといい、日本語では補酒や加糖と呼ばれます。また、このつぎ足す糖分のことを「門出のリキュール」といい、フランス語ではリキュール・デクスペディションといいます。シャンパン製法の最後の工程かつ出荷を「門出」に見立てた何ともおしゃれな言い回しですよね。だからこそ、特にシャンパンは門出のお祝いに好まれ、新しい出発の際にお祝いとして贈られることが多いのです。


 最近流行りのノン・ドサージュというのはこの門出のリキュールが添加されていないもので、ノン・ドサージュにまつわるこんな話があります。ある女性ソムリエが海外に旅立つ前に、パートナーである男性が選んだシャンパンをバーで一緒に飲みます。門出のリキュールが入っていない(ノン・ドサージュのシャンパンである)ことに気付いた女性ソムリエは、自分の門出を祝ってくれていないのかと少し考えます。結果としては、ノン・ドサージュのシャンパンを一緒に飲むことで、二人の未来の再会を願う思いを伝えたかったという深いお話です。ソムリエの人にしか分かり合えない、高等かつロマンチックな演出ですが、このノン・ドサージュというキーワードが次回のシャンパン通の話にもつながるので、次回まで覚えていてくださいね。


 今回は簡単にシャンパンの歴史や製法を説明しましたが、ここでは書ききれない数々の厳しい規定がシャンパン製法には定められていて、それを守った上でシャンパーニュ地方のシャンパンだけが正式名称を名乗れるわけで、それが高級品たる所以です。次回はノン・ドサージュを含めて、シャンパン通となるための3つのポイントをご紹介したいと思います。


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