【ジェノサイド】 許されざる人権問題について改めて考える #32

 


 米中対立の先鋭化は至るところで見られますが、その一つに新疆(しんきょう)ウイグル自治区を巡る人権侵害問題があります。ジェノサイドとは英語でgenocideと書き「民族大量虐殺」を意味します。geno-は遺伝子や民族・部族など組織的なものや根源としての意味合い、-cide はsuicide(自殺)などの単語にもある通り、殺すことを意味します。今年1月、米政府は中国政府がウイグル人などのイスラム教徒系少数民族に対しジェノサイドを行っていると認定し、7月12日には正式に大量虐殺や残虐行為の防止に関する議会向け年次報告書を発表しました。報告書では、中国によるウイグル自治区での人権侵害を米政府がジェノサイドであると認定したことを改めて明記し、人道に対する罪の具体例として「投獄、拷問、強制不妊手術、迫害」などを列挙しました。これに対して中国外務省の報道局長は7月13日の記者会見で、「米国に他国の人権状況をあれこれ言う資格はない」、「報告書は紙くずだ」、「今世紀最大の大ウソだ」と切り捨てました。米国もそれなりのエビデンスを揃えた上での報告書への明記と思われ、中国の反発が虚しく思えますが、実際に収容所で拘束されていた方の証言は衝撃的です。

 ウイグル自治区にある収容施設では現在ウイグル人とトルコ系言語を話すイスラム教徒が少なくとも100万人以上拘束されているとみられています。2018年3月からウイグル自治区の収容所で拘束されていたトゥルスナイ・ズヤウドゥンさんという女性は英BBC放送や各新聞社などの取材に対して、収容所で性的暴行や拷問が組織的に行われていたことを証言しています。米国のスパイではないかとの疑惑を持たれ、3日間意識がなくなるまでブーツで胸や腹を蹴られ、意識がなくなるまで殴り倒されたことや、顔に黒いマスクをかけた複数の男性から性的暴行を受けたこと、習近平氏を称える洗脳など、中国が世界をコントロールすることを収容所の中で繰り返し聞かされたそうです。

 また収容所では、「一般管理」「厳格管理」「強化管理」の3つのグループに分けられ、それぞれ制服の色が定められて、強化管理の中の人は24時間手錠と足かせを付けられていたといいます。また一般管理にいたズヤウドゥンさんが目撃した片足の5本の指を全て切られた強化管理の男性収容者など、現代社会においてこのような凄惨なことがいまだに行われていることに対して、信じがたくやりきれない気持ちでいっぱいになります。


 中国がこのようなことを行う目的は定かではありませんが、栄養剤や感染症予防薬として薬を服用させられ、吐き気やしびれを引き起こす注射なども打たれ続けたようです。男性も含めて生殖器の機能を壊すようなことが行われ、「ウイグル族が子孫を残せないようにすることが中国の目的だ」とズヤウドゥンさんは証言しています。中国は収容所の事実や暴行・虐待などは全く存在しないとして、ウイグル自治区への調査団の受け入れを拒否し続ける姿勢を見せています。また中国は収容所を移動させ、人権侵害の証拠を隠滅しているという報道もあり、実際に今後どのような顛末になるか分かりませんが、ズヤウドゥンさんは調査に自分も一緒に連れて行ってほしいと懇願しており、事実究明への意志の強さや正義感を表明しています。現在ズヤウドゥンさんは米ワシントンに住み、亡命申請をしていますが、本人の身に危険が及ぶことがないように祈るばかりです。


 米バイデン政権としては、中国政府によるウイグル自治区での人権侵害や強制労働問題を巡り、「新疆と結びついた企業や個人は、米国法違反に問われる高いリスクを冒すことになりうる」とする勧告を発表しました。

新疆ウイグルの綿花を使った衣料や太陽光パネルの部品工場を通じた部品調達を中国に頼る世界の企業に対し、より厳しい姿勢で臨む方針を改めて示しました。ユニクロの綿製シャツが世界的に問題にされたり、柳井さんの発言(政治問題であり人権問題ではない)がSNSで炎上したりということがありましたが、実際にフランスでは7月に入って、仏検察がユニクロの現地法人に対して人道に対する罪に加担した疑いで捜査を開始したとの報道もありました。

 海外では、ナイキやアディダス、H&Mといったブランドがウイグル問題に対してはっきりとした態度を表明する中、日本では政府も企業も鈍感な姿勢を見せています。日本ではジェノサイド問題は中国との関係や番組スポンサーに配慮してあまり大々的に取り上げられることはないですが、日本企業でジェノサイドに加担する企業は欧米市場から締め出される位のところまで来ています。私たちもこの問題に目を背けることなく、何をなすべきかを改めて考えることが必要です。環境破壊につながる商品を買わないという動きは徐々に見られていますが、こういった人権問題に関しても鈍感にならずに何が真実かを個々人が見極めた上で、しっかりとした対応をとっていきたいものです。


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