【金利と為替】 米金融政策の大きな転換点 #48


 11月2-3日に実施された米FOMCでは、当初の予想通り、テーパリング(量的緩和の縮小)の開始が決定されました。FOMC直後の米10年債の金利は前日比で5bps以上上がり一時1.6%を超えましたが、市場ではすでに織り込み済みであり、すぐに落ち着きを取り戻しています。今回のFRBの決定は、コロナ禍での未曾有の金融緩和であった量的緩和政策を修正する大きな転換点といえます。FRBのパウエル議長は、今後の焦点となる早期の利上げを否定しましたが、出口へ向かう第一歩を歩み始めたことに変わりはなく、今後の金利、為替、株式のマーケット及び我々の生活レベルへの影響を注視していく必要があります。

 

 今回の米FOMCの内容は、テーパリングは今月11月に開始され、縮小規模は米国債を毎月100億ドルずつ、MBS(住宅ローン担保証券)を毎月50億ドルずつ、資産購入ペースを落としていくというものです。未曾有の金融緩和で毎月1,200億ドルずつ資産購入していたものを、11月から150億ドルずつ落とすということですから、このペースが維持される前提であれば来年6月には資産購入額がゼロになります。パウエル議長は、緩和縮小の終了時期と利上げ開始時期が直接結びつかないとは言っていますが、来年6月から利上げする「シームレス利上げ」は理論上可能なわけで、タカ派の人々は来年0.25%ずつの3回ないしは2回の利上げを見込んでいます。この今後の利上げタイミングを予測する上で最も重要になるのがインフレ関連の指標です。

 パウエル議長は一貫してインフレは一過性であるとの見方を維持しており、利上げについては慎重な姿勢を継続しています。その一方で供給制約は想定よりも長期間続いていてインフレが予想よりも長く続いていることも認めています。供給制約の解消とともにインフレは沈静化していくとの見込みをしているわけですが、8月のジャクソンホールでのパウエル議長の相当なインフレ楽観論が、今回のFOMCでは相当程度後退しているような印象を受けており、インフレ指標の代表格としての消費者物価指数の一つであるコアCPIやさらに変動が大きいものを除いたCPIも結構な勢いで上がっているため、このパウエル議長の見方が本当に適正なのかを見極める必要があります。


 この歴史的な金融政策の転換点が日本の金利・為替・株式に及ぼす基本的な考え方を整理しておきたいと思います。

 金利に関しては、早期の利上げ観測をもとに米2年債の金利は今年1-6月には0.15%前後で推移していたものが、急激に0.5%程度まで上昇しています。米国が利上げのサイクルに入ってくると、日本の短い年限の金利は政策でピン止めされているため、超長期と呼ばれる長い年限の金利がまずは上がっていくと思われます。つまりはイールドカーブが立っていく形になるということです。

 為替に関しては、1ドル110円前後で推移していたところ、9月のFOMCから円安が進み、2017年3月以来の115円の水準まで円安ドル高が進んできています。これは米国の金利上昇に伴うものですが、1ドル115円は強い抵抗線になっており、オプションのストライク価格が設定されていたりするため115円を越えるドル高は進みにくい壁になっていると思われます。しかしながら、1回抜けると一気に118円程度まで行く可能性もあります。為替の基本的な考え方としては、日米の金利差拡大から円安ドル高方向に進むのが一般的な考え方だと思いますが、円安は輸出企業の利益回復から景気の下振れリスクを抑制すると同時に、超スローな日本の消費者物価の上昇率加速に多少なりとも寄与する形になるため、円安自体は悪くないと思っています。一方で、急激な円安は、輸入物価の上昇を招き、消費者に価格転嫁できない場合にはかなりの部分を企業が負担せざるを得ない形になるため、そうなれば企業収益の低下から雇用機会の減少、仮に価格転嫁(値上げ)できたとしてもそれによって消費者の実質賃金の大幅低下を招くなど、私たちの生活に大きなマイナスを及ぼすので留意が必要です。

 株式に関しては、パウエル議長が今は利上げのときではないと言い切ったことが安心材料となり、S&P、ナスダックともに米国の株価は最高値を更新して上がり続けています。しかしながら、この動きは今後のインフレの状況次第で大きく見方が変わり得る(利上げが早まる可能性がある)ものであり、私はこの楽観的な動きを少し懐疑的に見ています。各国の中央銀行が大規模緩和の修正に動いてきている中で日銀だけが緩和解除が遅れそうな見込みであり、世界から見て取り残された日本の売りにつながらないことを祈りたいと思います。


 繰り返しにはなりますが、世界的にインフレが市場のテーマになりつつありますので、皆さんの生活にも影響を及ぼしている半導体不足やエネルギー価格の上昇も含めて、インフレというキーワードを重視して今後の世の中の動きを見極めていくことが大事だと思っています。


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