【豆知識】知っているようで知らないウイスキーの世界(2)#59

 

 

 大麦麦芽を原料とする単一蒸留所の原酒で造られたウイスキーがシングルモルトというのはお伝えした通りですが、このシングルモルトウイスキーは本当に個性が強く、また希少性も高いため、値段も少し高めになります。バランス重視型のブレンデッドよりも、蒸留所の個性やこだわりがそのまま反映されている感じです。土地の気候や水で特長が分かれますが、製法の違いによってもその特長が際立ちます。



 まず麦芽づくりの製法に関して、麦芽を乾燥させる際に、「ピート」と呼ばれる泥炭を燃料として使用すると、ピートの香りが麦芽についてピーティー(泥炭を燃やすことで生じる独特の薫香、スモーキーに類似するウイスキー独特の表現)な味わいのウイスキーが出来上がります。すべての蒸留所がピートを燃料に使っているわけではないですが、ピートの産地や種類、炊き具合によって違いが際立ち、また蒸留釜などの仕込み設備でも違いが出ます。特に小さくて首の短い蒸留釜で蒸留すると、濃厚な味わいになるといった具合です。また貯蔵される樽も、材質によって違いが出るのは想像の通りで、貯蔵環境によっても蒸留所が立地する気候風土の影響を何十年という単位で受けます。そのため、海沿いに立地する貯蔵庫で熟成すれば、ほんのりとした潮の香りが、森の中の貯蔵庫で熟成されれば爽やかな森林の香りがつくといわれています。

 スコットランドは現存する蒸留所が約100か所といわれていて、例えば北部のスぺイサイドには、シングルモルトの代表的な蒸留所として、「マッカラン」や「グレンフィディック」などがあります。そしてハイランドと呼ばれるスコットランドの大部分を占める土地には、「スキャパ」や「アードモア」が、アイラ(ISLAY)という淡路島程度の島には、「ボウモア」や「ラフロイグ」などの蒸留所があります。アイラ島はモルトウイスキーの聖地とも呼ばれ、8つある蒸留所はすべて海辺にあることから、潮の香りや海藻といった独特の個性が生み出されます。ただ私がボウモアを飲んだ個人的な感想としては、潮の香りなどはよく分からず、それよりもアイラ島で育まれたピート香が圧倒的な存在感を発揮し、ピーティー感が抜群に強いです。例えていうと、秋田を代表する漬物である「いぶりがっこ」のような臭さがあります。ストレートで飲むとそのいぶりがっこさがさらに際立ち、ロックやトワイスアップにすると少し緩和される感じです。


 日本にもたくさんの蒸留所があり、サントリー創業者の鳥井信治郎氏の想いを形にした、1924年に日本で初めて誕生した蒸留所である大阪の「山崎蒸留所」や日本のウイスキーの父と呼ばれるニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏が1936年に操業開始した北海道の「余市蒸留所」、清酒造りで400年の歴史がある東亜酒造が2021年2月に復活させた埼玉の「羽生蒸留所」など、40を超える蒸留所があります。今年2022年には私の実家である秋田にも蒸留所が出来るようです。


 国産ウイスキーメーカーの積極的なキャンペーンや2014年に放映されたNHK朝ドラの「マッサン」のモデルがニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏であったこと、糖質・プリン体を気にする健康志向の人向けに爽快な飲みやすさのハイボールが盛り上がるなど、ウイスキーはブームになりつつあります。

 そのような中で面白い取組みも見られるようになりました。それは蒸留所の樽の中のお酒をNFT化(NFTは#15のブログ参照)することで小口での管理・取引を容易にしたのです。UniCaskという日本の会社がそれを可能にしました。UniCaskが1口当たり約1ℓで100口分のスプリングバンク蒸留所(スコットランド南端にあるキンタイア半島のキャンベルタウンにあるモルトの香水と称される1828年創業の歴史のある有名蒸留所、ウイスキー評論家であった故マイケル・ジャクソンが最高の5つ星を与えた数少ない蒸留所)の樽のお酒を2021年12月15日にNFTにて販売したところ、販売開始から9分で完売しました。この樽は1991年ビンテージのため、すでに30年の熟成を経ていますが、さらに20年の熟成を経て2041年にボトリングされます。今回NFTを購入した人は20年後に50年熟成のウイスキーを飲むことも可能な一方で、20年後を待たずに途中でNFTを売却することで現金化もできます。NFTはマーケットプレイスを通じて随時売買できるため、需要と供給次第で購入時よりも価格が上がることもあります。また手元のNFTを活用してカードゲーム形式で楽しませる仕組みや希少な蒸留酒のサンプルが届けられる仕組みなど、樽を保有している20年の間も楽しませる仕組みが用意されています。私は残念ながらこのNFTを購入できなかったので、第二弾の羽生蒸留所のNFT販売時は何とか1口購入したいと思っています。


 NFTというブロックチェーン技術を用いて、樽の中のお酒の所有を証明する新たな取組みはウイスキーの将来の発展につながる話題性のある取組みであり、これは今後ウイスキー以外の色々な実物資産とも紐づいて世の中に出てくる可能性があります。NFTはデジタル資産との連動性が良いとされていますが、こういった現物資産で従来は小口化が難しかったようなものでも所有を証明できることは本当に興味深いです。

 NFTの面白さはもちろんのこと、今回の主題でもあるウイスキーに関して、まずは現物そのものの独特で芳醇な香りや深い余韻を楽しんだり、色々な産地や原料、製法などをさらに深く勉強してみるのも面白いと思います。特徴的な香りやピーティーな味わい、個性が強くてきつい味わいのものから少し甘さのある口当たりの良いものまで、色々なウイスキーを試してみて、お気に入りの1本を探す旅(ショッピングやバーホッピング等)をしてみるのもいいですね。ウイスキーの世界を知ってから飲んだら、きっと忘れられない1杯や1本に出会えるはずです。


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